高木完:人と違うことをやろうって思う気持ちを持った方がいい

Director:Tee Kamei / Photo:Kohay Matsu / Interview : Hiroaki Fujii

メジャーフォースとして活動し、現在もDJやプロデューサーとして第一線で活躍する高木完氏。コロナ禍をきっかけに立ち上げた中古レコード販売サイト「MEMES TOKYO」。そこから始まるBEAMSとのコラボのことや、80〜90年代当時のレコード購入事情の話まで、思う存分に聞かせて頂きました。

──MEMES TOKYOを始めたきっかけを教えてください。



MEMESをなんで始めたかっていうと、コロナで暇で退屈だった時期に加えて、うちのお母さんが亡くなっちゃうっていう時があって、逗子の実家を片付けてたらレコード雑誌、本がいっぱいでさ。そのときに、これどうしようかなと思ってたら今はラブホテルっいうバンドをやっているNEKOちゃんが「わたしがウェブサイト作るから、こういうのウェブで売ろうよ」みたいな話をしてくれて、まあ時間あるし面白そうだからやろうかなというのが、そもそもで。名前はミームからMEMES(ミームス)にしたんだけど、音も似てるしビームスでコラボ面白くない?みたいな話をBEAMSさんにもちかけたら「いいですよー」っていう話になって。で、こちらでも何度かレコード本を置かせてもらって、さらにTシャツも作ったりさせてもらってっていう。

WEBサイトは今もやってるんですけど(リンク下記)ただレコードはしっかり頭から聴いて針飛びしないかチェックして、ちょっとでも針飛びしてると一生懸命直したり。

値段つけも、バカ高くはしないんだけど、相場調べるのが結構時間かかる。

一番高いとこと安いとこ見て、それからメルカリ。もちろんDiscogsもみて、だいたいそこを基準にしてやって、これ結構大変だなと、、。最初のうちは面白かったんだけどね。

──はじめてみて反応はどうでしたか?


すごい一気に売れたよ。最初はあっという間に売れた、覚えてないぐらい売ったもんな。俺同じレコードを何枚か持ってるっていうのが多かったんだよねヒップホップとか。

プロモーション盤がいっぱい海外から送られてきたのもあったので未開封とか普通に売ってた。

あとは、自分がもうさすがに聴かないなと思うハードコアパンクとかそういうのはだいぶ売りましたね。高値がついてるレコードも売った。『バッファロー'66』とか、あれは高く売れた気がする。

──ちなみに僕、元六本木ウィナーズ(昔あった深夜営業のレコード店)の店員ですよ。

あ、そうなの!? よく行ってたよ。

僕らが行ってたのってレアグルーヴの頃で多分1番行ってたのが、85〜87年とかそれくらい。

それこそWild Bunchが来たとき一緒によく行ってたよ、ネリーフーパーも一緒に行った。あそこって値段高かったけど、高いから残ってるんだよね12インチが。

Def Jamのエンジ色のやつってほぼほぼウィナーズで買ったもんな、他ではなくなってたから。

当時ジャンボってDJがいたんですけどそいつとジャンケンで勝って買ったのよく覚えてる。001番のDef Jamは。「1枚しかないどうする?ジャンケンしかない!」って。あの時ジャンケン勝ったの忘れられない。

──ほんと皆さん真剣でしたよね。

中古盤屋行く時とかも、みんなで回ることが多かったから最初はてくてく歩いてるんだけど、途中から急ぎ足になってきて、最後階段登るときはもうダッシュみたいな(笑)

なんかもう真剣になっちゃって、走ってんだけど笑いながらも真剣。みんなレコードマップ持って。

──レコードマップありましたよね!!

レコードマップ持って地方とかいくと、1店に5、6人ででみんなばーって入って、みんなが散らばってエサ箱をがーーーって見るから

「わーー、俺どのエサ箱いこう!?」みたいになってた。

あとレコードフェアもあったから、よく西新宿行ってましたよ。ビルの1フロアで朝からレコ屋が大挙して集まってやるフェアが年に何回かあって、

ハイファイとかフラッシュとかマンハッタンも、みんな集まって。そんなときは朝から釣り行くようなかんじで行って並んでた。俺も藤原ヒロシもヤン富田さんも全員並んでた。

10万円とか持ってさ、高いのでは1枚1万円とかで買うからね。もう寝不足できたやつとかゲロ吐いてた(笑)

──藤原ヒロシさんも並んでたんですね

並んだよ一緒に。早朝から行って。みんな若いからね。俺がだって25、6で、ヒロシも22か3ぐらい。

──その頃、なんかすごかったんでしょうね東京のレコード街

そうあのレアグルーヴの始まりのときってね。あ、故人になった方の話なんですが、マンハッタンの社長は当時ヒップホップ全く興味なくて、

マンハッタンがまだ靴脱いで入る時代。渋谷警察の裏にあったんですよ、当時はマンションの一室に。俺あるときチャックDと一緒に行ったの、PUBLIC ENEMYのね。初来日だから 89年。そしたらチャックDのこと知らないんだよ。「ああ、なんかDJできたの?」とか言って。その後はヒップホップがんがん売ってるのに(笑)

あそこ凄いのがさ、その故人の平川の親父が(マンハッタンレコード創業者)、俺とかヒロシがレコード買うじゃん、当時ブレイクネタ探してそれが重要だったからさ。そうすると「もうそういう買い方よくないんだよね」とかブツブツ言いながらさ、次の週になったらそのレコード値上がりしてんだよ(笑)

マンハッタン、あのあとヒップホップばんばんやってたけど、80年代終わりぐらいまでヒップホップ全然興味なかったからね。だいたい今じゃ考えられないけど当時ブラックミュージック好きの人はラップ、ヒップホップのこと下に見てた。

──最近になってまた若い子がレコード買ってるみたいですね。

あーーそこは特に何も考えないかな

さっきもディスクユニオン行ったたけどさ、なんか再発してるレコードがバカ高くなってるのみて、いらないなあって。

オリジナルだったらまだわかるんだけど。もともとが高いからしょうがないんですけど、再発盤とかにちょっとプレミアついて高くなってるのはどうかな。買う人きっと後悔すると思うけど、後年に。「なんであの時はあんなものに何万円も払っちゃったんだろ」って

前にQティップがきたとき、レコード屋に連れていって、探してるレコードあるっていうから「あ、これ再発してるよー」って言ったら「再発はいらない、オリジナル盤じゃないと買わない」って言ってた。

──確かにみんなこぞってオリジナル盤を探してましたもんね

大体再発音悪かったよね、当時ね。くらべちゃうと全然レベル違うなあって。でもまあ今は音いいよねみんな。さすがに買うほうも、そこそこの値段だから。音悪いと買わないからね。昔はやっぱりレコードがメインでしたからねDJも。

──でも7インチとか掘り出すともうキリがなくないですか?

7インチはそれこそロンドンのカムデンとかのレコード屋いって、探すのめんどくさいからもう箱ごと買ってました。80年代は。

そのなかに、のちにSEXY TKOでカバーした「TOUCH ME,TAKE ME」のオリジナルとかあって、それ以外もメジャーフォースのネタになってるのかなりある。

──今の子たちはそういう感じはあるんですかね、探し当てる感覚というか

もう出尽くして、先輩たちがいっぱい見つけちゃったから発見は少ないんじゃないの?

発見がないとそこの喜びも少ないだろうし、執着もないんじゃないかな。

──でも今アジアの若い子のなかでアナログがすごく流行ってるみたいです

へえー、それは昔のもの買ってるってこと?

まあ今の現行のレコードも売ってるもんね。高いけど。

──80年代くらいの音楽シーンはどうだったんですか?

さっきも話したけどヒップホップに関しては、もう下の下に見られてましたねブラックミュージック界隈では。こんなもん音楽じゃねえぐらいの勢いで。

むしろブラックミュージック好きの人の方がヒップホップ嫌いだったんですよ。まったく誰も評価しないみたいな。最初出てきたときは評価してたかもしんないけどカーティス・ブロウとか。そのあとのRun-D.M.C.くらいから、こんなもん音楽じゃないでしょ、みたいな雰囲気になって、PUBLIC ENEMYくらいまでそんなムードが漂ってた。

A Tribe Called Questが出たくらいから、だんだんあれ?これちょっといいんじゃね?みたいな雰囲気に時代が変わっていった感じ。

マンハッタンレコードもその辺から急にヒップホップ寄りになってた。

──そんな感じだったんですね

大体ブレイクビーツ目当てでレコードで買ってるのなんてもうけちょんけちょんに言われてたんだよ。そんな買い方やめてよみたいな。

気持ちはわかるけどね。ちょっとしか聴かないから(笑)

──そうですよね。曲の冒頭だけみたいな

てもそれで色々聴くようになって、すっげえおもしろいレコードいっぱいあるなって気づいた。それまでフュージョンとか全然好きじゃなかったんですよ。自分はヒップホップからフュージョンとか好きになった。

ネタを探してるうち、頭から全部聴いちゃうみたいな。逆になんかネタがあるかなと思って購入したけど、特に美味しい場所がなかったレコードは悔しいからどこかしら面白いとこ見つけてやるって。

「くっそ、カスレコを買ってしまった」と思うんですけど。カスレコのどうでもいいところを、なんかわざわざ逆回転とかしながらサンプリングして「変な音になったかも」みたいな。

──あのサンプリング文化はもう今あんまないんですかね?

サンプリングは金かかるんだよ。権利的なこともあって。サブスクに乗せられないとかね結構バンされちゃうとか。

これ許可とったの?誰に言ってこの仕事してんだよ、みたいな。サンプリングやくざが出てきちゃう。あ、サンプリング警察か、どっちかというと。

ピピピッ厳重注意!みたいな(笑)

──MEMES TOKYOの今後は?

今後もやっていきますよ、コラボとか面白いので、今回はそれでやらせてもらって。SIX SHOPね、Red Dragonの。Red Dragonは曲も作ってるからね、メジャーフォースでもう3回くらい作ってるよ。今回の新作はなかなか面白いのができた。実験的なことをやらせてもらえるのがうれしい。そんなエクスペリメンタルなことやらせてくれるキャバクラがどこにあるのっていう(笑)

でもそれってなんかさ、昔日活がロマンポルノになる前かな、なったあたりかな、コスモスファクトリーっていう日本のプログレバンドがポルノ映画の劇伴やったり、さらにもっと前だと若松孝二の作品でジャックスがやったり、そのイメージが俺のなかでどっかあるんだよな。エロを期待して見に行ったら音楽がダークで、けっしてイケイケな。「バーニラ、バニラバーニラ♫」みたいなんじゃないっていう(笑)

──今度そのRed Dragonのモトヨシさん(CEO)も一緒にイベントを。

はい、それはビームスで、『Riggin’ Dragon』っていうDJイベントと一緒にやります、僕もミームスとのコラボをコラージュアーティストの野島君と作って、Tシャツや中古盤、雑誌を置いて、

DJイベントは8月9日に僕とK.Motoyoshiと銀座たけ内(FUMIYA[RIP SLYME]/ SU)でやります。

──最後に今の若いDJになにか一言頂ければ

それは一番あれじゃないかな、ちょっと人と違うことをやろうって思う気持ちを持った方がいいし、持ってほしい。


ヒット曲かけたり、その場に合わせすのが大事だけど、絶対これは負けねえ、そういう部分を持ってほしい。


アベレージ的には場を盛り上げるのが一番だけど、絶対これは負けないっていうものを持ってればずっとやっていけるので。


それはどんなジャンルでも使い方でも。だいたい今は何人かでやることが多いでしょ、そうしたらその中で勝つ気持ちは持ちながら、でも流れは崩さないようにして。


やっぱり自分の番の1時間前ぐらいには現場行って、何がかかってるか状況をみて、それでいて自分らしさを出していく。自分らしさは出さないとね。ヴァイナルだろうがUSBだろうが。

Information

8月9日(金)より、「ビームス ジャパン(新宿)」 4階「TOKYO CULTUART by BEAMS」にて〈SIXSHOP(シックスショップ)〉のポップアップショップを開催します。

今回会期を前半後半に分け、前半は高木完氏プロデュースの〈MEMES TOKYO(ミームス トウキョウ)〉をフィーチャー、後半は〈SIXSHOP(シックスショップ)〉の魅力を余すところなくお見せする内容となっています。

六本木レッドドラゴン・K.Motoyoshiとアートディレクター・ハイロック氏が手掛ける「ネオ東京土産」をお見逃しなく。

また、会期中は、イベントが目白押しですので是非、会場に足をお運びください。

MEMES TOKYO

『SIXSHOP POPUP』

開催期間:2023年8月9日(金)〜8月26日(月)

※8月21日(水)は休業日となります。

開催店舗:ビームス ジャパン(新宿)4階

DJイベント『Riggin’ Dragon』

開催日時:2024年8月9日(金)18:00~20:00

※どなたでもご参加いただけます。

※20:00以降はご入店いただけません。

会場:ビームス ジャパン(新宿) 4階

『TOKYO CULTUART by BEAMS』

DJ:KAN TAKAGI / 銀座たけ内(FUMIYA(RIP SLYME)/SU) / K.Motoyoshi(Red Dragon CEO)

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