ディアジオジャパン鈴木健太:ヘッズ的なマインドを持ち続けることが挑戦の原動力

ブランドがカルチャーの中に存在し、カルチャーの課題を解決するために投資をすることで、循環する流れを生み続ける。

Interview: Masaki Kawamura

このインタビューでは、カルチャーへの愛情が滲み出る独自のイベントを生み出し続けるディアジオジャパン カルチャーリードの鈴木健太氏に話を聞いた。

― 鈴木さん、今日は、お忙しい中、このインタビューに参加してくださりありがとうございます。はじめに、自己紹介をお願いします。具体的に、ディアジオジャパンのカルチャーリードとして何を担当しているのか教えてください。

鈴木健太:

ディアジオ ジャパン株式会社マーケティング部のカルチャーリードとして、スコッチウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」など、ディアジオが保有するブランドのカルチャー施策を担当しています。


― カルチャーリードというのは具体的にはどんな役割ですか?

鈴木健太:

社内外と連携してブランドとカルチャーを繋げる活動を行う役割です。そもそも何故このポジションが生まれたかというと、若者を中心に従来の広告が伝わりにくくなっている中、人々は普段からブランドのことに興味を持っていないという前提に立ち、人々が興味のある場所にブランドを存在させるという考え方から生まれた組織です。カルチャーを作っている方々、それはアーティストやクリエイターだけでなく裏側で働くみなさんも含めてカルチャーを構成する人々にブランドのファンになってもらうための活動を行い、最終的に人々にブランドが認知される、受け入れられていく状態を作ることを目指しています。

(Photo by ASANO HIROKI)

― ディアジオジャパンにカルチャーのポジションが生まれたきっかけを教えてもらえますか?

鈴木健太:

他国のディアジオには、数年前からマーケティングの組織の一つとしてカルチャーを専門としたポジションがあり、私も日本で同じポジションが設けられることを熱望していたのですが、いよいよ日本でもそのような組織が発足することになりました。準備は2022年の10月あたりから進めていたのですが、スタートしたのは2023年の7月で、まだ始まったばかりです。ディアジオとしても高価格帯のラグジュアリーなブランドへの投資を強化をしている時期で、より従来の広告が効きづらいユーザー層にブランドのファンになってもらうために、カルチャーとの関わりを強化しようという狙いです。先日もUltra Japanで来日したPeggy Gouがプレミアムテキーラブランド「ドン・フリオ1942」のボトルの写真を彼女のアカウントで投稿してくれましたが、これもディアジオワールドワイドでの関係値の積み重ねが背景にあって実現したものでした。

― 鈴木さん自身もカルチャーに興味があって、カルチャーリードになったたということですか?

鈴木健太:

はい、その通りです。Mixmagを読んでいる人は皆さんそうだと思いますが、若い頃から、音楽、アート、映画などのカルチャーにどっぷり浸って楽しんだり支えられて来たし、DJや作曲などプレイヤーとしてもカルチャーの片隅で活動し、カルチャーから色んなモノをもらいました。恩返しというと厚かましいですが、ある時からせっかくブランド側にいるカルチャー好き人間として、ブランドがカルチャーを支援し、課題解決に貢献することがブランドビジネスもに良い結果をもたらす循環を作リたいと意識するようになっていました。そんな自分にとってはカルチャーリードは願ってもない仕事だと思っています。

(Photo by ASANO HIROKI)

― それはアーティストやクリエイターにとっても嬉しいことですよね?

鈴木健太:

そう思ってもらえるよう活動していきたいですね。そこにズレが無いようにクリエイターやアーティストと対話を重ねることで、お互いの実現したいこと、お互いに利益が得られる方法を一緒に掘り下げるプロセスが大事だと思っています。それには自分自身が対象となるカルチャーへの好奇心を持っていることが大前提になります。2023年9月に代官山の蔦屋書店で開催されたPodcast番組『奇奇怪怪』のポップアップとイベントでのパートナーシップはまさにその理想的な形でした。ラッパーであり、クリエイティブディレクターでもあるTaiTanさんの活動に以前から興味があったのですが、いくつかの小規模な取り組みを経て、長いスパンで関係を築いた結果として、この企画を通じて彼の周りにいる各ジャンルで活躍するクリエイターコミュニティの中にブランドが存在するという光景が実現しました。

― こういった動きは、なかなか簡単には真似できないし、本当にカルチャーが好きな鈴木さんならではの活動の仕方ですね!鈴木さんが音楽やカルチャーに関心を持ち始めた瞬間や出発点は何でしたか?


鈴木健太:

中学一年生の時にAM深夜ラジオにハマり、電気グルーヴのオールナイトニッポンで紹介されていたヨーロッパを中心としたテクノと、ジョーダンでブームだったNBAのビデオの後ろで流れているUSヒップホップに興味を持ったのが同じくらいのタイミングでした。その後、高校時代に放送部でDJを始めたり、今もDJとしての活動や国内外のフェスへ遊びに行ったり、ブランドの活動と並行して楽しんでます。


― 鈴木さんの手がけるイベントが楽しくなるのは必然的な流れですね!

鈴木健太:

以前にジョニーウォーカーが主催する「THE WALKERS IN TOWN」という音楽フェスに出演していただいた尊敬するアーティストに「ラインナップを見て、ブランドの人が音楽好きなんだろうなって思いました」って言ってもらい、かなり嬉しかったですね(笑)

(Photo by ASANO HIROKI)

― 鈴木さんの手がけるイベントは「カルチャー愛」が滲み出ているんでしょうね!

鈴木健太:

そうだと嬉しいですね(笑)。ブランド的、マーケティング的な正しさだけでなく、ブランド側が本当にカルチャーが好きであるという気持ち、熱量はきっと人々にも伝わるということを信じています。そういうアウトプットの積み重ねが共感を生んで、新しい仕事に繋がるんじゃないかと今までの経験からも感じています。

― ある種尖ったアーティストやクリエイターといっしょに活動することは、社内では風当たりを感じたりはしませんか?

鈴木健太:

社内の人達は、そのような尖ったアーティストたちとの取り組みが人々の熱狂を生むことを理解していて、積極的にサポートしてもらえる空気があります。鈴木がカルチャー好きってことは社内でも知られていて、任せてもらっている部分も大きく働き易いです。

― Mixmag Japanは「挑戦」がテーマなのですが、今直面している最大のチャレンジは何ですか?

鈴木健太:

大きく二つあって、一つは先ほど触れた「THE WALKERS IN TOWN」という音楽フェスを2023年春に第一回を開催したのですが、このフェスをブランド発信のコンテンツとして大きく成長させることがチャレンジです。既に2024年春に第二回の開催が決定しており、信頼できるパートナーの皆さんと絶賛準備中です。もう一つは、このカルチャーのポジションをディアジオジャパンに定着させることですね(笑)。まだできたばかりで、役割や効果測定の手法など体系化できて無い部分が多いので、カルチャーに投資するとこんな良いことをがあるというのを会社に証明するのが目下のチャレンジです。

(Photo by ASANO HIROKI)

音楽やアートのカルチャー現場に足を運び続けること、つまり、ヘッズ的なマインドを持ち続けることが挑戦の原動力。

― 鈴木さんの「挑戦する勇気」をどこから得ていますか


鈴木健太:

音楽やアートなどのカルチャーの現場に足を運び続けることですね。ヘッズ的なマインドを持ち続けることが挑戦の原動力になっていると思います。現在進行形のカルチャーからもらったインスピレーションが自分の拠り所になって挑戦的なアウトプットにも繋がれば良いと思っています。

― Mixmag Japanの読者にはビジネスマンでもカルチャーに関わりたいと思っている皆さんが多くいると思います。何かメッセージがあればお願いします。

鈴木健太:

自分のように業界外からキャリアがスタートしても、分岐点で常にカルチャーに近い方を選び続けることで、次第にキャリアをカルチャーに近づけていくことは可能です。カルチャーどっぷりのキャリアの人には専門性で及ばないことは当然ありますが、ビジネスとカルチャーの両方の言語を理解することで二つを繋ぐ架け橋として重宝されることがあるなと実感しています。

― 「挑戦」するときと「リラックス」するとき、どんな音楽を聴いていますか?それぞれ5曲づつ教えてください。

“Challenge” Playlist

“Chill” Playlist

― Mixmag Japanとしてはすでに何かを達成してしまった方で、完成仕切ってしまった方よりも、今も変化の過程の中にいて「挑戦する姿勢」を持っている方にフォーカスしていきたいので、今後も鈴木さんの活動を引き続き注目していきたいです。今日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました。

鈴木健太:

ありがとうございます。自分もかなり遠回りした末、やっと自分がしっくり来る仕事に辿り着いたばかりで、やっとスタート地点に立ったような気持ちです。これからどんな活動ができるか自分でも楽しみです。

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