Sofia Ilyas「まず、自分らしくあること、そして自分の個性を大切にすることです。」

Sofia Ilyas が音楽業界でのキャリアや個人的な成長、そしてBeatportのチーフ・コミュニティ・オフィサーとしての役割について語ります。

Interview: Félicie Zufferey

Credit: Grace Phillips

Sofia Ilyas が音楽業界に足を踏み入れたきっかけは、伝統的なルートからではなく、音楽への純粋な愛と意味のある何かを成し遂げたいという願いからでした。彼女のユニークな経歴は、彼女をBeatportのチーフ・コミュニティ・オフィサーに導き、そこでは情熱と戦略的な洞察を組み合わせて業界に貢献しています。

インタビューでは、ソフィアがキャリア初期に直面した挑戦、Beatportでの役割について語っています。彼女の初期の経験は彼女の情熱を燃やし、彼女のプロフェッショナルな道を形作る原動力となりました。

ソフィアは、コミュニティ内で本物のつながりを築くために、自己の探求と本物であることが重要であると考えています。彼女のストーリーは、音楽業界で数少ないパキスタン系女性の一人として、彼女の洞察を活かし、音楽業界を超えて共鳴する取り組みをリードすることを証明しています。

──ソフィアさん、あなたがこの業界に足を踏み入れるに至るまでの経緯を教えていただけますか?


20代の終わりに、当時いた仕事に落胆して、もっと意味のある仕事をしたいと思い、私が唯一愛している音楽に関わることに決めました。どうやって業界に近づくかは分かりませんでしたが、音楽会場をネットワーク作りの場として利用しました。サウンドブースに立って、サウンドエンジニアや照明スタッフと知り合いになり、レコードレーベルもサウンドブースにいることが多かったので、そうして多くの人やアーティストと知り合うことができました。

ある日、Nils Frahm のライブを見に行ったところ、そのパフォーマンスが私にとって非常に印象的でした。その後すぐにベルリンに移り住み、Dustin O'HalloranやÓlafur Arnalds、Anne Müllerといった素晴らしい作曲家たちと時間を共にしました。彼らのレーベル、Erased TapesでPRの仕事を始め、それが私の音楽キャリアのスタートとなりました。音楽業界やPRの経験は一切なかったので、ロンドンと自分の仕事を辞めて、これらのアーティストのPRを始めるのは少し大胆な決断でしたが、学びたいという意欲があり、全力を尽くしました。

これらのアーティストは皆、彼らの仕事に対して深い情熱を持っており、私は幸運にも制作のすべての側面を早く学ぶことができました。PRに関しては、私は彼らがどのように音楽を作っているのかに対して自然に湧き出た好奇心が音楽を紹介する際、それをジャーナリストにも伝えたいという動力源になりました。

私が誇りに思っている重要な瞬間の一つは、Nils Frahmをより広いオーディエンスに紹介出来たことです。最初はインストゥルメンタル音楽をメディアで取り上げるのは難しかったのですが、3年間集中的に取り組んだ結果、彼がシーンに頭角を表していくようになりました。

私の音楽キャリアでは、主にマーケティングとPRに集中していましたが、業界で数少ないパキスタン系女性として、常に多様性を意識していました。それで、Beatportでの立場を考えた時、PRやマーケティングからよりコミュニティに焦点を当てた役割への自然な進展を感じました。コミュニティ構想を見たとき、非常に感銘を受け、インスピレーションを受けました。

Beatportのコミュニティ構想 (写真内Link)

──キャリアの中で、多くの挑戦に直面されたと思いますが、あなたのプロフェッショナルな進路や個人的な成長に影響を与えた転換期について教えてください。

音楽業界でのキャリアを始めた頃、私は知識が乏しいことを自覚していました。大学に通ったこともなく、音楽教育も受けておらず、ライブショーに通い始めたのは28歳からでした。音楽の知識が乏しかったため、特に意見を表明する際に多くの不安を感じました。私の意見は、音が私に何を感じさせるかに基づいており、演奏される音と同じくらい録音の質に対してもこだわりを持って接していました。


その知識の欠如が、ミキシングやマスタリング、制作、レコードレーベル、レコード店などについて学ぶ原動力となりました。業界全体を理解したかったのです。意見に自信を持ち、それを表明するまでには数年かかりましたが、今ではそんなことはすっかり無くなりました。

最初は弱点だと感じていたことが、私の強みになっていきました。


ポジティブなアプローチを取り、より積極的に多くのことを学ぼうとした経験が私を助けました。しばしば、エゴやフラストレーションを脇に置いて、すべてを知る必要はないと理解する必要もありました。他人と自分を比較せず、私たち全員がそれぞれの経歴に基づいてユニークな何かを持っていることを理解することが重要です。

Credit: Grace Phillips

──Beatportのチーフ・コミュニティ・オフィサーとして、現在直面している課題について教えてください。

Beatportは、DJコミュニティにおける多様性の改善は、マーケティングキャンペーンや一回限りの努力では達成できないと認識しており、継続的な支援と注力が必要です。 この役割に就いて以来、私が直面している課題の一つは、現在の状況を改善するためにどこに最も注力するかということです。

今のところ、私はオフラインのイニシアチブにより重点を置き、人々が集まり、お互いから学び、コミュニティのポジティブな力を感じて変革を促す取り組みを行っています。 しかし、私のポジションで何をすべきかは常に進化しており、効果的な変化をコミュニティにもたらすためにどこに注力すべきかを判断するのが難しいことがあります。

──あなたの役割では、多くの責任をバランスよく管理することが重要火と思います。特定のルーティンや、仕事量を管理し、創造性を保つための工夫はありますか?

Credit: Grace Phillips

私は仕事を考え、視覚化し、それからメモを取り計画を立てるのが好きです。次に、集中力のあるパワーアワーを通常少なくとも4時間、休憩や気を散らさずに行います。その後、散歩やトレーニングをして、自分のために料理をします。少し仕事をし、通常は1時間ほどですが、それから音楽を聴いてリラックスします。


音楽の次に私は食べ物が大好きです。ビーガンであり、できるだけ自然な材料を使って食べるようにしています。食べ物は私たちの精神的および身体的な健康に大きな影響を与えるため、私の日常生活において大きな優先事項です。


創造性に関しては、私は周りの人達からプロジェクトに関する意見や考えを求めています。彼らはしばしば、私が考えなかったことを見抜いてくれ、特に私のチームであるグレースやライアンは、アイデアを出し合うのに素晴らしい存在です。コラボレーションを通じて、創造性を維持し、他者と協力することでより多くのことを達成できます。

──音楽シーンに深く関わっているあなたにとって、現在の仕事にインスピレーションを与えている特定のジャンルやアーティストはいますか?

私は月に一度、2時間のSoho Radioの番組を持っています。それは私に、過去と現在の音楽を探求するインスピレーションを与えてくれています。

私はピアノ音楽が大好きなのですが、ヒップホップやグライムなど、他のジャンルも大好きで、ピアノイベントにもそういったジャンルを取り入れようとしています。その点で、来年東京でピアノイベントを開催したいと考えています。もし東京でピアニストの方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!

──今後の展望として、Beatportでの取り組みやプロジェクトで、特に楽しみにしているものはありますか?


Beatportのコミュニティチームとして行うイベントは、本当にインスピレーションを与えてくれます。


最近ロンドンで行ったプライド展の運営に関して、私はチームを非常に誇りに思いました。ロンドンのナイトライフから生まれたクィアコミュニティの素晴らしい一面が見られたのは素晴らしい体験でした。

もう一つのエキサイティングなプロジェクトは、CEOのロブ・マクダニエルズによって、私のチームに委託された、15万ドルの多様性+公平性基金です。毎年、私たちはこの基金を多様性を促進する5〜6の団体に分配しています。日本のコレクティブもキューリストに参加できます。

Beatportの多様性+公平性基金 (写真内Link)


──Beatportは最近、東京で初めてのイベント「IMS Connect in Tokyo」を開催しましたが、このイベントがどのように進行し、Beatportの日本での今後の展望についての見解を教えてください。

IMS Connectを通じて、東京で初めてのIMS/Beatportイベントを開催できたことは非常にエキサイティングでした。

日本はとても多くのBeatportユーザーがいます。現地の音楽コミュニティとのつながりを深めたいと考えており、このイベントは直接的なコミュニケーションの入り口として機能しました。

若くてダイナミックな客層で、彼らの話を聞き、学ぼうとする姿にとても感銘を受けました。


アーティストが全員日本人で、イベント全体が日本語で行われたことは、私にとって非常に重要でした。多くの笑顔が見られて嬉しかったです。イベントの前後に多くの素晴らしい人々と出会い、東京の音楽シーンや文化について多くを学びました。それは非常に刺激的な場所であり、音楽を作り、つながりたいと願う若者が多くいるのを見るのは素晴らしいことです。

BeatportとIMSでは、特にレコードレーベルや現地のアーティストとのつながりを深めたいと考えています。

Credit: Paul Declercq

IMS Connect Tokyo – イベント概要(写真内Link)

──最後に、音楽業界にポジティブな影響を与えたいと考えている人々に、何かアドバイスをお願いします。

最初にアドバイスしたいのは、自分自身であること、そして自分の個性を探求することです。それが、自分にインスピレーションを与えてくれる繋がりを見つける手助けになります。


音楽業界に初めて接する際には、躊躇してしまうことがあるかもしれませんが、自分のコミュニティ、例えばレコード店や音楽会場など、すぐにアクセスできる方法でつながりを持つことが重要です。


耳を傾けて、深く観察し、音楽界にポジティブな要素を加える方法や、自分の居場所を考えてみてください。その答えを急いで見つける必要はありません。つながりを持ち、対話を通してみれば、答えは自ずと見つかるでしょう。

Credit: Grace Phillips


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