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Mars89 Part2 – CULTURE CLASH –

Part 1より)

「例えば、『世の中クソだよね』って言うと、だいたいみんな共感するじゃないですか。『で、どうすんの?』みたいな」

―レベルという域で考えると、Mars89は表現方法は違えど現代のじゃがたらであるような感じがします。

Mars89 どうなんでしょう。そうだと嬉しいですけどね。今、話をしていて気がついたことがあって、レベルと通じるかは分からないんですが、ステージがあってその下に人が集まるような、いわば上下関係と集団が形成されがちなシチュエーションより、みんなそれぞれが個人として楽しんでくれる感じの方が自分には合っているなと。個人主義とアンチヒーロー的なマインドの先にある、ダンスミュージックというか。

― 音をパスするから、あとは楽しんでって感じですね。

Mars89 その感じですね。個々の自発的な動きに期待するというか。音楽以外でもちょっと疑問を投げかけて、考えさせるってくらいの方が性に合っているかなって。例えば、「世の中クソだよね」って言うと、だいたいみんな共感はするじゃないですか。で、「どうすんの?」みたいな。

― 音楽制作は、いつ頃から始められたんですか?

Mars89 3年くらい前ですね。機材は、前はLOGICを使っていたんですけど、今はNATIVE INSTRUMENTSのMACHINEをメインに使ってます。『End Of The Death』をレーベル〈Bokeh Versions〉からリリースしたきっかけは、ちょうどレーベルオーナーが日本へ来ていたときに、自分の曲を渡したことで。それを気に入ってくれて、その頃ちょうど曲を作っていたので、それもまとめて送りました。

― ブリストルのレーベルというところが、それまでの流れと繋がっていますね。

Mars89 僕が曲を渡してみようかなと思ったきっかけも、レーベルオーナーが日本へ来ていたときに聴いた、彼のDJプレイの選曲内容が好きだったからなんです。きっと気が合うだろうって。実際にリリースしてみたら、予想していなかったところからの反応があったりして、面白かったです。なんか自分の子供が知らないところで育っていたみたいな(笑)。

End Of The Death / Mars89

― UNDERCOVERのコレクションのショーの音楽や、今年の秋は、Louis Vuittonの広告に曲が起用されたりと、世界的なファッションシーンからも高い注目を浴びていらっしゃるかと思います。UNDERCOVERデザイナーの高橋盾さんは、ここ最近はテクノに興味を持たれていると聞いています。Luis Vuittonのデザイナー、Virgil AblohもDJをすることが好きで、4つ打ちをかけますよね。なので、偶然ではない感じがするというか。

Mars89 そうですね。偶然ではないかもしれないですね。現代性を意識したり、感じ取ったりするタイプの人が同じところに注意を向けるみたいなのはあると思います。この時代に、この世の中にどう接するのかというか。

― UNDERCOVER 2019AWコレクションのひとつの柱である『時計仕掛けのオレンジ』に、4つ打ちをぶっ込んでくるセンスがすごいなと思って。ショーの曲を、エクスクルーシヴで作られたじゃないですか。どういう感覚で作られたんですか?

Mars89 『時計仕掛けのオレンジ』をやることと、ランウェイをやる会場も決まっていることまでは聞いていたんで、その会場で『時計仕掛けのオレンジ』を上演します、そのサントラを自分は作ります、という感覚でトラックを作りました。あの空間の中で鳴っていて欲しい、あの世界の中で表現するためにサントラを作り直す感覚というか。もともとがクラシックなので、サントラに入っている曲も使う構成にして、正反対の方向、できるだけインダストリアルでいこうと思いました。それとジャンルを超えたものにしたくて、打ち方とかもなるべく複雑なリズムにしたり。
― さらに逆の逆をいったって感じですね。

Mars89 はい。できるだけプリミティヴかつ、感情的なところを……例えばめちゃめちゃブチギレて物に当たるときって、洒落たリズムになったりしないじゃないですか。そして規則正しいリズムになったりもしない。…みたいなことを考えて、『時計仕掛けのオレンジ』の登場人物のアレックスの感情の起伏を描くようなものをイメージしました。

― そういう感覚や考えは、誰から教わったんですか?

Mars89 映画のサントラは好きで聴いているので、そこから学んでることはあるかもしれないです。あとはコードとか音楽理論をちゃんと知らないので、“音のパーツを雰囲気頼み”ってところもあるかもです。

「メロディはいらないんです。パンチとリズム感。身体性ってところに一番フォーカスを置いているので」

― DJをしている姿は、楽しく力が抜けていている感じがしますが、その反面プレイ内容はダークで強いんですよね。

Mars89 DJをすることはすごく楽しいですね。プレイにハッピー的な要素がないことは、自覚しているんですけど(笑)。なんかその、なんて言うんですかね、明るくハッピーな音楽にあまり魅力を感じていないのかもしれません。さっきの話みたいに、処方箋的な感じというか、何かに対する怒りとか、悲しみとか、無力感とか、そういうところからの叫びというか。みんなでハッピーになるというところでは、解消されない思いみたいなものがあるのかなと思うので、それを打破するきっかけになったらいいなと。

― なんだか、わかる気がします。

Mars89 なんとなく楽しかったっていうんじゃなくて、明日からまた生きていこう、闘っていこうみたいな。

― 注目しているサウンドやプロデューサーや、音の質感とかありますか?

Mars89 音の質感に関してはツルッとしているよりは、ザラついている方が好きなのはあります。あと重心低めなものが好きだったり。去年の年末くらいからずっとはまっているのが、Nkisi(キシ)という人で。彼女が作るサウンドが、“未来的”という言い方もされているんですけど、僕は今の時代にバッチリだなと思っているんです。初めて聞いた時に、今必要な音だなって感じました。アフロっぽい要素もあるんですけど、ミニマルかつプリミティブ。
― 電子音楽の中でも、ストレートなものから、メロディーラインが入ったものなどいろいろありますが、どちら寄りですか?

Mars89 極端なことをいうと、僕はメロディはいらないんです。必要なのは、パンチとリズム感。身体性ってところに一番フォーカスを置いているので、ベースの一発があって、それを躍らせるための、それが生きるための音が周りにあるくらいでいいです。

― ビートメイカーの中で好きな人はいますか?

Mars89 あまり人で考えたことがないんですけど、あの作品の、あの曲はっていうのはありますね。サウンドシステムのカルチャーに出会ったときに感じた、あのシステムで肺とかが押しつぶされそうな感じ……あれは感動ですよね。耳じゃなくて、身体で感じるもの。それこそ、「BACK TO CHILL」でGOTH-TRADさんがかけていたものや、昔、浜松町でやった「OUT LOOK FESTIVAL」のときのサウンドシステムは凄かった。あと、「BS0」という自分の先輩たちがやっているイベントで食らったり。全身の毛が立つ感じというか、サウンドシステムのカルチャーは好きですね。特にUKのサウンドシステム・カルチャーがある上で成り立っている、ポストダブステップ・セットとかも好きですしね。

― 最近、周りにいるDJや、パーティの姿勢に関してどう思いますか?

Mars89 DJに関しては、フロアでお客さんに対する接し方が、明確な人が多い感じがします。どういう関係性を築いていくかとかを、考えている人が多いのでは。パーティに関しては、いい意味で不良性を表に出している人が多いかな。「やってくぞ」という力というか。今はパーティの規模も大きくしてはいるし、どういうゲストがくるかによって異なってくるとは思うんですけど、その中でジャンルではなく、どういう感情のパーティにするのかみたいな。ジャンルで境界線を引かない感じはもう浸透したと思うので、その先にある人を結びつけるものは感情的な部分かなと。今大事なのは、姿勢だと思います。

― 今後やっていきたいと思うパーティはどんな内容のものになりますか?

Mars89 今までは、地域やジャンルの境界線を溶かしていくような感じでやってましたが、次はもっと感情面や雰囲気にフォーカスしたパーティをやってみたいですね。それには、フロアのライティングや装飾とかもしっかりやってみたいです。

― 音制作に関して、この先目指したい方向はありますか?

Mars89 最終的には、映画のサントラを作ってみたいというのはありますね。それと、映画を作ってみたいです。漠然とした世界や空間みたいなものを作るのが好きなので、すごく抽象的な感じなるのではないかな。文章も書いてみたいし、メモには書き留めているんですよ。やりたいことはたくさんありますね。でもやっぱり肉体で感じる部分を重要視したいのかもしれません。耳だけで感じたことではなく。

FEEL REBEL

Mars89が推薦する”レベル”を感じる3つのこと

暗黒大陸じゃがたら - 『季節の終わり』

すごくシンプルなんですけど、このめちゃくちゃかっこいい曲で、ストレートに「待ちわびた反乱の季節だ」と言われるのと、ものすごいパワーが張る感じがします。

グレタ・トゥーンベリ

心無い大人に誹謗中傷されながらも、自身の信念に基づいて未来のために戦っていて、大きな尊敬に値すると思います。

ジョン・カーペンター監督『ゼイリブ』

映画がそもそもエスタブリッシュメントが支配するこの資本主義社会を風刺したもので、その存在自体がRebelと言えると思います。そして、戦おうと言う意志と力をもらえる映画でもあると思います。

Edit&Text:Kana Yoshioka(DIALOGUE)
Photo:Reiji Yamazaki
Mars89
DJ/サウンドプロデューサー。テクノ、ドラム&ベース、ダブステップなどのベースサウンド、エクスペリメンタルなサウンドを中心に、国内外でDJプレイ。2018年8月にブリストルのレコードレーベル〈Bokeh Versions〉より、アルバム『End Of The Death』、2019年10月には、Amy Beckerによる新レーベル〈Acrylic〉の第一弾としてEP「TX-55 / Successor Projec」をリリース。ファションシーンともリンクし、UNDERCOVER、Louis Vuittonなどのブランドへ楽曲を提供。またブリストルのインターネットラジオNoods Radio Bristolにて、レギュラーで番組を担当。毎回、日本人DJをゲストに迎え、自身のプレイとともにミックスを配信中。2019年の12月12日には、〈UNDECOVER RECORDS〉より12インチ「The Droogs」をリリース。

 

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