CULTURE CLASH
DJから知る世界のカルチャー
ダンスミュージックが持つアイデンティティ。そんなことを音楽を通じて教えてくれる、DJという伝道師を紹介したいと思います。第一回目は、レベルミュージックをこよなく愛する、Mars89が登場。

Mars89
DJを通じて、REBEL MUSICをフロアに拡散する
—“89”なので、1989年生まれですね。
Mars89 そうですね。
—となると、物心ついた頃にはすでにDJカルチャーというものがあったのではないでしょうか?
Mars89 DJカルチャーはあったと思いますが、全然何も知らなかったですね。音楽は好きでしたが、バンドサウンドだったと思います。
―どんな子供だったんですか?
Mars89 小さい頃は、親が持っていたCDとかを聴いていて、幼稚園ぐらいの頃にビートルズを聴きながら、フライパンをギターに見立てて弾くフリをして遊んでいたのを覚えています。小学生の頃はKISSを聴いて、火を吹いたり、血を吐くのに憧れたり。母親が持っていた、デッド・オア・アライブとか、デュラン・デュランのCDをカセットテープにダビングして、それをウォークマンで聴きながら走り回っていました。
―「音楽っていいなあ」と、本格的に感じたのはいつくらいからですか?
Mars89 もうずっと楽しかったですね(笑)。最初に音楽に入っていったことを忘れているくらい自然なことでした。リズムに乗って踊ったりすることが、ずっと好きだった感じがします。
―ヒップホップなんかは聴いていたんですか?
Mars89 ヒップホップは、中学の時にDr.Dreの『2001』にハマってよく聴いていて、あとは当時流行っていたネリーとかを聴いていました。あとは、ショーン・ポールも流行っていて、そこからレゲトンやダンスホールに入って、TSUTAYAでメガミックスのCDを借りたりしていました。それを聴きつつ、昔の延長線上でマリリン・マンソンなども聴いていました。

「レベル的な感覚の最初は、ヒーローものが好きだったということに遡るかもしれません」
MARS89 そうですね、電子音楽。
― 電子音楽に入っていったきっかけはなんだったのでしょうか?
Mars89 もともとDJから入っていったんですけど、中学生の頃に放送委員をやっていたので、放送室を占拠して好きな曲をかけたり、お気に入りの曲をCDに入れて友達にあげたりしていて。で、クラブに遊びに行くようになったんですけど、あるとき遊びに行ったパーティでプレイをしていたDJが、素人目に見てもなかなか下手という感じで、「これでいいんだったら、僕がやったほうが良くないか!」とか思って。その頃、ちょうど東京へ出ることを決めていたんで、お金を貯めつつ楽器屋へ行って、体験コーナーとかで買う人の振りをしてDJの練習をしたり。それで東京へ出てきたと同時に、 DJを始めた感じですね。
―DJを始めたときは、どんな曲をかけていたんですか?
Mars89 高校生の頃、Daft Punkが地元に来たり、「Maison Kitsuné」とかフレンチ系のダンスミュージックが流行っていたんですよね。なので、ちょうどバンドサウンドとダンスミュージックの中間のような音が好きでした。Phoenixとか、MGMTとかを聴いていたし、80年代のリバイバルもあったんで、DJを始めた頃はそのあたりのサウンドと、自分が昔聴いていた曲を混ぜる感じでしたね。そこからリスナーじゃなくて、DJとしても曲を掘るようになって、いろいろ聴いて好きな曲を集めていたら、そのほとんどがUK産でした。当時はレーベルやアーティストのいる土地なんて考えもしませんでしたが。
―2007年あたりは、ダブステップも定着してきていた時期でもありますよね。
Mars89 そうですね。今でもずっと聴いているんですが、Massive Attackの『Mezzanine』や、Burialの『Untrue』、あとはLeftfieldの『Leftism』とか、The Bugの『London Zoo』にハマって。そこからDigital Mystikzや、Skreamなどの初期ダブステップ系を、そのときは何もわからず聴き始めて、いつの間にかそういうサウンドにハマっていった感じですね。
―フレンチエレクトロからダブステップへと移行していったわけですが、ダブステップのどの辺りに惹かれたんですか?
Mars89 もともとエレクトロに関しては、あまり明るい曲は好きではなかったんです。なので、自分は暗い方面に行きがちなのと、ちょうどエレクトロ的なものが、音数が多くてアッパーな感じになっていったことに対する反動もあったかもしれません。
― DJのスタイルはどう構築されていったのですか? かける曲もですが、DJのスタイルからレベルを感じるんですよね。
Mars89 そう言ってもらえると嬉しいです。それこそレベル的な感覚というのは、ヒップホップやパンクを聴いてきたこともあるんですけど、そもそも政治的な事とセットになっているのは普通だったし、自然なことでした。それと今のスタイルに辿りつくまでに、ファンクとかソウルとかを聴いていた時期もあるし、それこそノーザンソウルとか、スカとかモッズぽいのを聴いていた時期もあったんです。なんでこうなったのかは、自分でもわからないこともあるんですけど(笑)。
― レベルを持ち合わせているなあと。
Mars89 レベル的な感覚の最初は、ヒーローものが好きだったということに遡るかもしれません。それこそ仮面ライダーとか(笑)。石ノ森章太郎の作品がものすごく好きでした。暗くて孤独なダークヒーロー系SFというか。大きなものに立ち向かうという感覚は、そういうので学んだかもしれません。そういう感覚を持ちつつ成長してヒップヒップやパンクと出会って、またそういうものからいろいろ学んだり。SF作品も大好きなんですけど、SF作品って社会悪に挑むようなものも多い。今の日常生活でもそれは同じで、力のある者の下に付くのか、またはその逆側に立つのか、みたいなのはあって。アーティストやミュージシャンとして、立つべきはどちら側かみたいな。
「ダンスミュージックって、喫緊の問題に向き合えるような気がしているんです」
Mars89 ヒップホップにもロックにも、今は商業的な要素の強いものとかいろいろあると思うんですけど、もちろんそういったレベル的要素があって、最近、何故今、自分はダンスミュージックなのかって思うことがあるんですけど、僕にとってロックとかヒップホップって自己啓発本みたいな感じがしていて…。「こういう感じで生きていく」みたいな。もちろん、夢があるとは思うんですが。それに対してクラブミュージックや、ダンスミュージックって、喫緊の問題に向き合えるような気がしているんです。「今苦しい」「今辛い」「だからクラブへ行こう」「踊ろう」って。処方箋みたいなものですかね。社会の中で生きていく苦しみとか、辛さに対して最前線にいる感じかなと。
― その感覚は自然に掴んだものですか?
Mars89 接している中でなんとなくですが、そういったカルチャーから学ぶことが多かったので、自分なりの体感ですね。
― DJの選曲では新旧プレイされますけど、テーマはどういう方向で考えていますか?
Mars89 選曲に関してはジャンルで考えていなくて、曲から感じる空間や世界をつなげていくように曲を選んでいくことが多いです。DJをする目的となると、なんていうのかな……、フロアに踊りに来ている人がいて、そこにDJが持っている音をぶつけて、お互いのエネルギーを爆発させるような場所を作りたくて。そういう何か内側のエネルギーを煽って出す感じというか。一人でやってても面白くないし、フロアにいる人たちがエネルギーを発散しているのを見て、こちらも応えていくみたいな。そのコミュニケーションが楽しかったりするし、それが目的でもあるんで。
― フロアにいるお客さんとの対話ですね。
Mars89 いわゆるライヴみたいにステージとフロアで向かい合うスタイルじゃないので、極めて抽象的な対話ですけどね。ライヴでヴォーカルの人が放った一言がフロアを熱狂させたりすると思うんですけど、そういう熱狂をものすごく抽象化したものが一晩続く感じというか、フロアにいる人にそれぞれ違う熱狂があって、DJを含めそれぞれはみんな個としてフロアに存在しているけど、音楽を通じてすべてが繋がっている感じですかね。なんとなくそういう感じが理想な気がします。
― 自分もその時代を知っているわけではないんですが、日本の音楽シーンで言えば、60年代以降の音楽シーンに通じるものがあるかなと思ったりするんですよ。
Mars89 60年代以前をよく知らないし、それ以降もよくわかってないのでなんとも言えないですが、70年代から80年代前後のものから受けている影響は大きい気がします。ずっと観ては力づけられてる映像があって、Mute BeatにJagataraの江戸アケミが参加しているライヴの映像があるんですけど、ことあるごとにそれを観て自分を奮い立たせていましたね。
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