源馬大輔:いつもやれない理由より、やるべき理由を見つけて前に進みたい

キャリアの始まり、現在の挑戦、そして未来のビジョンについて語る

Interview: Arthur Ryuichi Beese

源馬大輔氏は、ファッション業界で多岐にわたる活動を展開し、そのクリエイティブ・ディレクションやバイイングなどで国内外の注目を集めています。彼のキャリアは、ロンドンのセレクトショップでのスタートから始まり、帰国後は様々なプロジェクトや企業の立ち上げに携わり、その独自の視点とアプローチで業界をリードしています。

今回のインタビューでは、源馬氏のキャリアの出発点から現在に至るまでの経緯、数々の挑戦とその乗り越え方、そして未来へのビジョンについて詳しく伺いました。音楽や芸術から得たインスピレーションをどのようにクリエイティブに落とし込んでいるのか、またこれからの挑戦についても掘り下げていきます。


──あなたの出発点をもう一度振り返ってみましょう。読者にあなたのキャリアの概要と、現在に至るまでの経緯を教えていただけますか?

音楽については雑食で12-3歳の時にStray Catsからロカビリーから音楽を好きになりました。

高校生の時、ジャズとか好きになって今に至ります。レアグルーブをジャイルス・ピーターソン、藤原ヒロシさんの影響で子どもなりにハウスとかヒップホップのネタを執着心を持って良く漁っていた事もありました。

今でもそうかもしれないんだけど、当時日本では一つの事を職人のように没頭している人の方が評価が高いような風潮があった。

キュレーションしたネタから新しいものを作っていくっていうのが今の仕事の中でも大きな影響があった気がします。


ティーンエイジャーの頃に友達のお兄ちゃんのバンドがロカビリーバンドをやっていて、当時サッカーのジャージを着ているようなセンスだったんだけれども、それを初めて見てから、ファッションのセンスも、音楽のセンスが目覚めて、次バンドを見に来た時にはもうVintageのLevi’sを履き始めるような体験がありました。

その後、ロンドンに引っ越す事になって、Newyork Styleのダンスミュージックがそれまで好きだったんだけど、「That’s How It Is」は月曜日のBar LumbaというクラブでJames Lavelleと Gilles Petersonが開催していたんだ。

自分にとって音楽は「良い」か「悪い」か、「好き」か「嫌い」かしかなくて、ジャンルとかは無くて当時それを強く思った時代でした。

洋服の仕事に携わりながら、音楽を愛する人生を送っていました。

──あなたのキャリアを通じて、さまざまな困難に直面してきたはずです。もし1つ選ぶとしたら、あなたが遭遇した最も重要なチャレンジは何ですか?

ロンドンに引っ越した時、帰ってきた時

1996年に行った時も半端な状態であったし、2002年に帰って来た時が特に帰って来てから日本の文化に合わせるのが大変でした。

物事をハッキリ言っちゃうタイプだから嫌われちゃったので、とても嫌われました。

それでも両方の街の事は好きだし、最高ですね。

──今日、あなたがしている挑戦は何ですか?その挑戦に対しての姿勢は、時代とともにどのように変化してきましたか?

本業はクリエイティブに携わっていたりするんですけど、「自分のスタイルを維持しながら時代に迎合したい」と思う。

全く、時代に合わない事、評価評価されないことっていうのは独りよがりになってしまっている証拠なのかと思いますし、それが自分のビジネスでもあるので当てはまらなかったらやる意味が無いかと。

クリエイティブ面を常に勝たせる想いはあるのだけれども、ビジネスも同じぐらい大事。

ジャーナリストの評価も、売れる売れないから分かるお客さんからの評価もどちらも大事。

──チャレンジャーであり続けるには、精神的にも肉体的にも鍛錬が必要であると感じています。集中力とインスピレーションを維持するための日課、ルーティンを教えていただけますか?

集中力がないので、できる時にしっかりやる。

マインドが準備出来ていない時に、考えても集中出来ないので。

一言で言うと「無理しない事」。

昔は無理していた事も勿論あったんだけども、48歳になったので無理は出来ないかなと。

若者として無理していた時代があったからこそ、今無理しなくてもいいのかもしれないけど、改めて今は無理はしたくないと思う。

ースイッチが入る瞬間とかがあるんですか?

モヤモヤしてないんですよ。朝起きた時から頭の中が何もモヤモヤ無くスッキリしてる。

昨日とかは調子悪かったんだけど今日は7時半から頭の中がスッキリしてる(笑)


ー良かったー!(笑)朝7時半から調子良いのは本当調子良いですね!

── 音楽や芸術から得たインスピレーションはどのようにクリエイティブ等に落とし込まれていると思いますか?

0から1っていうのはよっぽどの人じゃないと難しいし。世の中のものから色々なインスピレーションがあるし、そういったものに対して大きなリスペクトがあって然るべきだと思う。

例えばキュビズムの展覧会があって、ピカソの彫刻があったんですよ。

それがキュビズムの方法論で出来上がってて、それを見た時に「これを洋服にしたらどうなるかな?」とダイレクトにコピーしてペーストする事は無いけど、「この人達がどういう風に考えていたか」を想像して、落とし込んでいく。

良い物が出来たら素晴らしいし、出来なかったらそれはそれかなと。

例えばヒップホップのトラックをとんでもない作りかたをする人達がいるんですけど、そういった人達が「ここを切り取って、この部分のピッチを変えて」のアイディアを洋服だったり、ちょっとした紙モノのデザインをする時に、頭の中に寄越してる事があります。

一つのネタがあれば、これとこれをくっつけて、これをストレッチしたりとかっていう事を考えます。

なので音楽の人達って凄いなって思います。

源馬氏のアトリエにて

──アウトプットされる音楽のジャンルがとても幅広く感じられます。

あなたの人生や音楽作りに深く影響を与えたアーティストや曲をいくつか挙げていただけますか?

DJの時は、Francois K.ですね。

ブランドでも色々とコラボした時でも、彼70歳で結構良い歳だと思うんですけど、すごい「飽くなき探求心」、新しい機材を使うし、新しい音楽も使うし、元々の彼の音楽の才能もあるんだけど、それに全く甘んじていないんです。

アンダーグラウンドのものと、オーバーグラウンドのものが同じようにあって、デトロイトのハウスもかけるけど、マイケルジャクソンもかけちゃうっていう所を僕はリスペクトしてるし、独りよがりになっていないと思う。

パーティっていうのは自分の感覚ではお客さんも含めてみんなで一緒に作るものだから、そこからかけ離れているのは。

テイトウワさんのイベントに行って一緒にプレイした事があるんだけど、彼が言ったことで一番好きだったのは、「お客さんとの波動の交換」っていうのがあるんです。

テイさんも雑食で、色々なものをかけるんだけど、その言葉が凄い頭の中に残ってて、何やるにも「お客さんとの波動の交換」を忘れちゃいけないなって思います。

結構うぉ~!ってなりますよね(笑)

ーなりますね~!

15年ぐらい前にテイさんにMixCDを焼いて渡していたんだけど彼、「いや~つまんないね~眠くなっちゃった。」ってよく言われてたので。僕の独りよがりのDJのプレーをつまんないねって言ってて。ず~っと「波動の交換」が頭の中に残ってる。

そこから自分がプレイする時は、お客さんをすごい良く見るようにしています。


──最近特に聞いている楽曲はありますか?

最近ダンスミュージックも色々な国で色々な進化を成し遂げてて、そういうものを聞いていたりするんですけど、カバーがとても最近多いです。

昔のハウス、ディスコをカバーをしている楽曲が多いんです。TraxsourceとかでみてるとそういうものがTop10とかで出てきてて。

100曲中、99曲はオリジナルを超えていないんだけど、たまに一曲ぐらい「これオリジナルよりいいじゃん」みたいなものを最近探しているかもしれない。

ー自分もChaka KhanがPrinceの曲をアレンジして、「I Feel For You」をプレイしたのを見つけた時は、彼女なりのブランディングもしてるし、スティービーのハーモニカすげー!とかなってました(笑)

例えばPrinceは素晴らしいワンアンドオンリーなんだけど、Sinéad O'Connor が Nothing Compares 2 U をやった時とかは、ベースの曲がいいからこそ、カバーもその人のアレンジ力で変わる瞬間が凄い良いなと思う。

──これから挑戦してみたいことや実現したいアイディアはありますか?

今、人に興味が出てきました。人自体をプロデュースしたいと思う事があります。

それがアスリートであったり、シェフだったり。

アスリートもクリエイティブだと思っているから、その人達が違う世界に挑戦する時に一緒に色々やりたいなという事を考えています。

ファッションもクリエイティブなんだけど、ファッションは今大きな波が来ていて、若い人が挑戦しづらくなっていてそういった人と挑戦出来ればと思っている。

ブランドの大きな資本力に飲み込まれてしまうから、僕に出来る事があるなら、若い人達、若くなくても良いんですけど、本当に力がある人達を波に乗せて僕も一緒に頑張りたいなと思います。


──最後に、読者にメッセージをお願いします。

退屈な人生になっちゃうし、とにかくどのモーメントでも挑戦することを忘れないでほしいなって思います。

自分のやりたい事を色々な事を理由付けてやらないっていうのが。勿論それも人生だし、リスペクトするけど、一回興味を持った事、なんかあったら少しでも逆に「やるべき理由」を見つけて一歩進めるようになったらなと思います。

例えば「子どもがいるから出来ない!」とか。まぁ、しょうがない!それも素晴らしいんだけど、逆に「子どもの未来の為にもコレやってみたらどうかな」って思えたらなと。

僕は「いつもやれない理由より、やるべき理由を見つけて前に進みたい」と思ってますね。

僕臆病なので、挑戦したくないなって思うんですけど、その昔ロンドンでガールフレンドが自分が仕事のオファ―受けるか、受けないかの時に「いや~出来るかなぁ。英語なんてそんな喋れないし」とか言ってたら、彼女から「絶対やったほうがいいよ。仕事あるでしょ?なんでやらないの?」というあの一言があったから今があると思って凄く感謝しているんです。



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