svgs_arrow-01-l svgs_close svgs_heart svgs_menu svgs_play svgs_stop svgs_arrow-02-b svgs_facebook svgs_instagram svgs_line svgs_search svgs_soundcloud svgs_twitter favorite player svgs_arrow-03-r svgs_setting svgs_slide-menu-bottom svgs_arrow-01-b more gift location recommended star clear

FEATURES

【連続インタビュー Part3】 Mars89 × 解放新平 – Trilogies Edition –

Burialがみせた逃避先に共感しつつ、暗がりから目指す先は「NEW DAWN」

Mixmag Japan | 1 April 2022

Mars89, Mars89 インタビュー, Mars89 Trilogies, mixmag

まん延防止等重点措置(まん防)の影響により、2月~4月の約2か月にわたり渋谷のContactで開催されているマンスリー・レジデント企画「Trilogies」。2月度はMars89をレジデントDJに迎え、彼と深い繋がりがあるレベルミュージック / システムミュージック界隈から多数のアーティストが集結した。まん防発令前、2月11日のepisode 1は、ブリストル・ミュージックのプラットフォーム〈BS0〉のスペシャルエディションと、故・飯島直樹が経営していた「DISC SHOP ZERO」のトリビュートイベントとして行われた。飛んで3月25日(金)のepisode 2は、Golpe MortalやKrikor、「Protest Rave」で関わりのあるMari SakuraiやMiru Shinodaらが招聘され、奇祭「Death Disco」として開催された。

今回のインタビュー企画は、4月1日(金)に行われるepisode 3に先んじて、Mars89が改めて各回のキープレイヤーと対談するものだ。episode 1から1TA(BS0 / Bim One Production)、episode 2からMari Sakurai(SLICK)、episode 3から解放新平(melting bot / Local World)が登場し、各々が追求する諸々について談義した。本企画最終章として、本稿では解放新平との対話をお届けする。

Mars89 × 解放新平

Mars89, Mars89 インタビュー, Mars89 Trilogies, mixmag

左: 解放新平 右: Mars89

Local World: 2016年より渋谷WWWをホームにスタートしたパーティ。世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャやクラブにおける最新のモードにフォーカスする。

南蛮渡来: Mars89とsuiminが主宰していたパーティ。渋谷RUBY ROOMでの隔月開催を経て、2019年からWWWβに舞台を移した。

― 振り返ると、私がMarsさんを認識したのはWWWβの「Local World」だったと思います。2017年にElysia Cramptonを招聘した回ですね。まずはお二人の出会いからお聞きできればと思います。

Mars89: KATAでやってたジューク / フットワークのパーティに僕が遊びに行ったのが最初だったはず。そこで解放さんを紹介されて、色々話すようになったんです。当時の僕にとってはジューク / フットワークが新しかったんですよ。その後、僕が渋谷のRUBY ROOMでやってた「南蛮渡来」に解放さんが来てくれるようになったんです。

解放新平: 単純に好きな音楽が近かったんですね。例えばポルトガルに〈Príncipe〉というレーベルがあるんですけど、南蛮渡来はそこと繋がってることもあって自分がやってるパーティとも通ずるところがあるのかなと。それこそジュークとかゴムとか、ローカルのヤバいビートから浮かび上がって来る音楽を、Local Worldではフォーカスしているイメージです。南蛮渡来からも同じ匂いを感じてました。で、実際にLocal Worldと一緒にやろうという話になって、PríncipeのDJ Nigga Foxを呼んだのが2018年の1月ですね。そのパーティがめちゃくちゃ上手くいったんです。Local Worldの前身イベントのころからやってることは変わってないんですが、人に認識してもらえた実感はそれが初めてでした。

Mars89: 「UKやUSだけじゃない」って考え方は南蛮渡来も一緒ですね。先輩にヒップホップが好きな人が多かったり、ニューヨーク・ガレージやソウル、ファンクがかかるパーティにも遊びに行ってたんですけど、僕としては「それだけじゃないでしょ」と思ってました。もちろんUK・USの音楽は好きなんですが、他のエリアにもフォーカスしたかったんです。どれが一番優れているとかじゃなくて、全部ヤバいぞと。どんなジャンルやシチュエーションも頭打ちな感じがしてくる時期は来ると思うんですけど、あの頃はポストダブステップがトレンドとして落ち着くタイミングだったような気がします。

解放新平: そういう意味では、みんなの意識が変わってゆく段階だったよね。エレクトロニック・ミュージックは今まで主に欧米が更新してきたけど、他の地域からも出てくるようになったというか。Local Worldが最初に呼んだのも、ジャマイカのEQUIKNOXXでしたし。

― 具体的な時期としてはTzusingが台頭してきたあたりですか?

解放新平: そうですね。ウェイトレス・グライムみたいに、今まであったスタイルを脱構築する動きが出始めてた頃です。そのあたりからDJのあり方も多様化してきたと思います。

Mars89: Tzusingが初めて〈L.I.E.S.〉からリリースしたのもそれぐらいですね。

解放新平: そのロウハウスも文脈のひとつで、僕は元々テクノが好きな人間なんですが、ベースミュージックも聴くし、ラップも詳しいわけではないけど好きな曲はあったり。今でこそ多様なジャンルを行き来するスタイルは標準化しましたけど、当時はまだある程度決まったスタイルで動いてたパーティが多かったように感じますね。

― US・UKへの中央集権的なアプローチではないにせよ、この2年間の海外アクト不在の影響は大きいように感じるのですが、実際のところどうですか?

Mars89: 僕はどちらかというと海外に行けないほうが辛いですね。やっぱり同じ街かつ同じ人たちでやってると、どうしてもその街のルールやノリみたいなのが出来ちゃって。で、その中で海外のアーティストがそれを壊してくれると、「そういうのもアリだったよね」と思えるというか。海外に行くと僕自身がその街のルールを知らない側の人間になれるので、そういう部分が楽しかったりします。その点では海外のアクトじゃなくても良いんですよね。その街とは別の文化圏から来るアーティストって、その箱にも街にも良い影響がある気がします。

解放新平: Local Worldも「海外アクト最高!今日はよろしくお願いします!」ってノリのパーティではなく、向こうとこっちのローカルをミックスするニュアンスです。むしろMarsくんのような国内アクトも同じぐらい重要だったので、海外からアーティストが来られなくてもそれほど影響はないですね。ただ、「これもうみんなやってるしな…」と思うことは増えました。

Mars89: コロナ禍以降、どこの箱もβみたいなことやり始めましたもんね。ローカルアクトだけのパーティも全然できると思うんですけど、ラインナップに想像力を割くリソースがないような印象はあります。その影響でお決まりのアーティストが並んでしまっているのかなと。当初は若い子にもっとチャンスが増えればいいなとは思ったんですけど、なかなかそうはならないですよね。それも街のルールだったりノリが少なからず作用している気がするので、やっぱり街のノリは定期的に破壊されたほうが良いなと(笑)。というか、パンデミックのタイミングで20歳になった子たちはそれ以前の街のノリを知らないので、完全に新しいジェネレーションだと思ってます。

解放新平: それはそう。コミュニティとかを自分たちで作らないといけない分、うるさい先輩もいないっていう(笑)。コロナ禍で抑圧された環境だったけど、そこで蓄積されたパワーっていうのはある気がします。速くて強い音楽がまだ流行ってるのも、そういうところに根拠があるんじゃないかな。

Mars89: 加速主義的なニュアンスを含んだ音楽が流行るときって、多くの人が今の状況に対するEXITを探している時期な気がします。

解放新平: Marsくんって速い曲かけることもあるけど、タイプ的に言うとそれだけではないじゃないですか。例えばジャングルをかけるときって、どういう意図でプレイしてるの?

Mars89: 僕も元々ガバやハッピーハードコアみたいな音楽は聴きますし、速めのユーロっぽいのも好きで、自分のかけ方次第ですかね。それこそジャングルなんかはずっと好きで、90年代初頭の楽曲は「ここではないどこか」を目指すようなエネルギーに溢れていたと思うんです。街の生活の苦しさとか、そういったものからの逃避先というか、抵抗へのエネルギーというか。その点に関しては、今と重なる部分がある気がします。僕はそういうニュアンスでジャングルかけてますね。

― 話が少し戻りますが、私にもLocal Worldや南蛮渡来で打ち出してきたスタイルが一般化した感覚はあります。Marsさんの場合4つ打ちにも頼っていない印象があるのですが、今のクラブシーンについて思うことはありますか?

Mars89: ハキム・ベイが『T.A.Z.: 一時的自律ゾーン』の中で、アナーキストへの命令として「4つ打ちではない音楽で踊れ」みたいなことを書いてるんですよ。その状況が今できてるっていうのが個人的に面白くて。

解放新平: 4つ打ちがもうメインじゃなくなってるもんね。4つ打ちの曲がかかってもずっと鳴ってるわけじゃなくて、途中でビートが変則的になることが珍しくないっていう。Local Worldがやっていきたいことは今出てきているスタイルのあくまで一部でしかないけど、その前段階でもあったので、タイミングとして早かったというアドバンテージはあるかもしれません。

Mars89: 4つ打ち以外で踊れる人が増えて、なおかつそれで盛り上げられるDJがたくさんいるってめちゃめちゃ良い状況だなと思っています。一時的自律ゾーンの中でナイトクラブを「解放されたゾーン」「少なくとも潜在的なTAZである」と書いていて、その上でハキム・ベイは「アナーキストは4つ打ちではない音楽で踊れ」と説いていたような気がするんですね。恐らくですけど、4つ打ちはとても快楽的で解放的ですが、彼はそうじゃないリズムの予測不可能性やカオスに向かう力に魅力を感じたのではないかと。その一節が印象的だったんですけど、ちょっと本に付箋を貼り過ぎて、どこにその文章があったか思い出せないですね(笑)。

解放新平: “フロンティアを目指せ”みたいな話なのかな。東アジアのクラブシーンを考えると、例えば僕は上海ALLなんかが「ヨーロッパになる必要はない」と考えている態度が好きで。僕の世代なんかはミニマルが盛り上がってた時代にクラブカルチャーと接するようになったから、“4つ打ち・テクノ・ベルリン”みたいな考え方があるんだけど、今のアジアの一部からは、欧米的なものをベースにしないほうが面白いんじゃないかってところから出発しているアーティストが出てきている印象があります。日本で言えば、そこにアニメの文脈が入ってくるみたいな。“欧米至上主義にならない”みたいなことは、それこそ「非中央集権主義」という言葉でTzusingとかがずっと言っていることではあるけど。

Mars89: ゴムとかデジタルクンビア、バイレファンキなんかもそうですけど、その土地の伝統的なサウンドを派生させたり取り入れたりしつつストリートに転化させたものなんですよね。そこに今のムードが合わさって、彼らのローカルができているというか。それを日本のローカルに置き換えたときに、意外と伝統的な文化がストリートに入ってきてないんですよね。その手のサウンドって祭りでもないと日常では聞こえてこない。1年のうちに数回しか触れるタイミングがないので、なかなかクリエイティブなアイデアと結びつかなかったりします。で、自分や街のアイデンティティは何だろうと考えたとき、アニメは絶対に入ってくるよなと。

― 今回の「Trilogies」には各回にサブタイトルがつけられているわけですが、episode 3の「NEW DAWN」というフレーズはMarsさんのイメージとしてはややポジティブな印象を受けました。今仰ったようなアジアの台頭やアイデンティティの発見はまさしく前向きな要素だと思いますが、Marsさん自身もそういった心境にあるのでしょうか?

Mars89: いや、僕自身は基本的にペシミストです(笑)。「NEW DAWN」はひとつ前のアルバムのタイトルだったのと、なかば義務感からつけました。新しい夜明けを夢見ながら過ごす、一番暗い時間。でも水平線の向こうにかすかに見える光を目指して進んでいくというイメージがあります。Burialが今年『Antidawn』を出しましたけど、やっぱり街や自分たちが置かれてる状況とあの作品はすごくフィットするんですよ。“夜明けなんて拒否して、永遠の夜を楽しもう”みたいな雰囲気も感じるし、彼の表現する夜には愛や包容力のようなものも感じる。そういった極めてポジティブな逃避に共感しつつ、未来に対する責任もあるよなっていう気持ちもあるんです。僕としては、何か新しい希望が見出せるようなコンセプトが欲しかった。

解放新平: 『AKIRA』だってそうだしね。終末間近の世界も、最終的には光に包まれるという。そういう世界観の設計というか、ストーリーの作り方はMarsくんらしいなと思う。

Mars89: その先に広がっている未来がどうなってるかは分からないですけどね(笑)。『AKIRA』は映画版だと光に包まれて終わるんですけど、原作の漫画では、瓦礫だらけのその後の世界を生きていかなきゃならないわけで。マーク・フィッシャーも言っていた通り、カタストロフィーは突然起きるものではなく、僕らは今まさにその最中を生きてるんですよね。そうであるならば、夢を見ることはすなわち抵抗することだと思うんです。

― Marsさんはそういうコンセプトやテーマ性をSF的にパッケージすることに長けてますよね。作品が出る度にそう感じます。最後に今回の企画の共通質問を解放さんにお聞きしたいのですが、未来に期待していることはありますか?

解放新平: 自分が箱を軸にイベントをやってきて、結局は環境を作ることになって来ると実感することが増えました。混ざり合うことでしか新しいクリエーションは生まれないと思ってるので。音楽に政治は関係ない、あるいは社会は関係ないという人の気持ちは分かりますし、ある種音楽がそういった文脈のしがらみを瞬間的に吹き飛ばしてくれる逃避でもあると思うので。ただ、その作品やあるスタイルが生まれる環境や土壌にも意識が向くと良いなと思います。期待することというより、僕が今のポジションでやっていきたいことですね。


Interview_Yuki Kawasaki

■ Trilogies -Mars89- episode 3 NEW DAWN
2022.04.01 (Fri.)
@ Contact Tokyo
OPEN 22:00
<イベント詳細>
https://www.contacttokyo.com/schedule/trilogies-mars89-episode-3-2/

■ 解放新平より
現在は下北沢のクラブSPREADを拠点にしているので是非遊びきてください
https://www.instagram.com/meltingbot/
https://www.instagram.com/spread_shimokita/

 

Did you enjoy the blog?
Like me!

Get the latest.

Follow Mixmag Japan on Twitter!